B型肝炎ウイルスの感染経路と集団予防接種

B型肝炎と感染経路

B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)を体内に持っている方の血液や体液が粘膜に接触することによって感染します。

ウイルスが伝播する感染経路をまとめた概念として垂直感染と水平感染があります。
垂直感染とは、B型肝炎ウイルスに感染している母親が子どもを出産する際に、主に産道における血液を介してウイルスが出生児に感染してしまう母子感染のことです。
出生児は、成人に備わっている免疫機能が十分に働きませんので、B型肝炎ウイルスを排除する力はほとんどありません。そのため、容易に持続感染してしまいます。

日本では1986年以降、B型肝炎母子感染防止事業により、B型肝炎ワクチンなどの接種が実施されています。乳児への感染を防止するため、B型肝炎ワクチン(HBワクチン)と高力価HBs人免疫グロブリン(HBIG)の注射により、現在ではほとんどの出生児に感染を予防することができており、母子感染の数は大きく減少しました。

他方、性行為感染、輸血感染、針刺し事故、刺青や覚せい剤注射での針の再使用、そして、集団予防接種等における注射器の使い回しなど、人から人へと横へ伝播されるものを水平感染と呼んでいます。
このうち、見過ごすことのできないものとして、集団予防接種等(予防接種またはツベルクリン反応検査)における注射針や注射筒の使い回しがあります。

B型肝炎と集団予防接種

特定の病気にかかりにくくするために、ウイルスや細菌、毒素の力を弱めてワクチンをつくり、それを身体に接種することを予防接種といいます。予防接種には、個々人が都合のよいときに、かかりつけの病院などで受ける個別予防接種と、地方自治体などがスケジュールを組んで、保健所などの会場で行う集団予防接種があります。

予防接種法が1948年に制定されてから、1994年の改正まで、日本では国民・住民に対して予防接種を強制してきました。そして、接種率の向上やコスト面、利便性の問題から、多くのケースで集団予防接種が選択されています。
この集団予防接種等における注射針や注射筒の使い回しによって起こったのが、B型肝炎の蔓延です。

国は注射器(注射針や注射筒)の連続使用により、B型肝炎ウイルスに感染する危険性を認識していながら、感染被害の予防対策を講じず、また、感染被害者に対する何らの救済措置も実施せず、注射器の連続使用を漫然と放置し続けました。
その結果、40数万人(国の推計)もの国民がB型肝炎ウイルスに感染させられてしまったのです。

B型肝炎ウイルスの感染を防止するためには、注射針だけでなく、接種者ひとりごとに注射筒も交換する必要があります。
遅くとも1951年までには、日本の医療関係者の中でもこの認識ができあがっていましたが、国が被接種者ごとの注射筒交換を指導したのは、実に30年以上あとの1988年のことでした。

感染被害者の方々は、慢性肝炎・肝硬変・肝がんなどの深刻な病態に悩み苦しみ、そればかりでなく、将来の発症への健康不安(キャリア)や病気に対する周囲の無理解・偏見と闘い続けてきました。

そこで、一部の感染被害者が立ち上がり、国の法的責任に基づく損害賠償などを求める訴えを起こしました。
長きに渡る法廷闘争の末、2011年に国が責任を認め、2012年1月から感染被害者の方たちへの補償として時限付きで設けられたのが、今回のB型肝炎給付金の支給制度になります。

そのため、今回の給付金制度において救済対象となるのは、B型肝炎ウイルスに持続感染されている方のうち、集団予防接種等における注射器の連続使用により感染されたと認定された方およびその方から母子感染した方(これらの方々の相続人を含みます)となります。

一次感染と二次感染と三次感染

一般的には、最初にウイルスなどに感染したあとで、さらに別の人に感染した場合、最初に感染することを一次感染といい、一次感染者から別の人に感染することを二次感染と呼びます。さらに、その二次感染者から別の人に感染することを三次感染と呼びます。

この点、今回のB型肝炎の給付金制度では、集団予防接種等によりB型肝炎ウイルス(HBV)に感染した方を一次感染者として救済対象とするのみならず、一次感染者である母親または父親から感染された方を二次感染者、母子感染した二次感染者から母子感染または父子感染された方を三次感染者として、給付金の支給対象としています。

給付金の受取り要件については、以下のページで詳しく解説しています。

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